透析患者の皮膚色について-皮膚色の定量的測定と各種生化学マーカーとの関係から
上記のテーマで第2回「JACET AJINOMOTO Award」を頂き、平成19年9月15日~17日の間、チェコ、プラハで開催される「ISBP2007(国際血液浄化学会)」へ派遣させていただくことになりました。日本臨床工学会の開催地である地元愛知での受賞表彰式でしたのでひと際、感無量でありました。 この拙著論文は日本臨床工学技士会事務局から再投稿を依頼されていますので近々、技士会誌に掲載される予定ではありますが、論文内容を簡単に説明させていただきます。
挨拶をする柴田氏
今回の研究で透析患者の皮膚色に興味を抱いたのは、オンラインHDFを行う患者の皮膚色が白くなっていくような気がしまして、何とかして色を定量的に測定できないものかと捜したところコニカミノルタ社のCR-400というのがありました。それで様々な患者の臍の上1cmと上腕の内側の日光照射の少ない部位を測定点としてデータをとりました。 そもそも色調の定量的測定は国際照明委員会によって規格化されており、わが国でもJIS規格に採用されているL*a*b*表色系に従っています。色の数値的定量は具体的には種々の産業現場で、たとえば車の塗料の色合わせ、繊維製品の染色にあたっての色管理などごく当たり前に使用されているようです。色の三属性の明度(value)、色相(hue)、彩度(chroma)を数値に置き換え、三次元座標上の一点としてどのような色も数値として記述できるというものであります。L*a*b*表色系のうちL値は明度を示す指標でありますが、数値100が真っ白、数値0が真っ黒と表現され0~100の間で数値が小さいほど色が黒いということを定量的に示すことになります。 結果でありますが、やはり透析患者では非透析患者に比べ有意に皮膚色が黒かったです。しかも半年間の経過でさえ色素沈着は緩徐進行性であり、その進行の程度は透析歴が5年未満の患者のほうが強いということが示されました。また維持透析の継続期間と患者の皮膚の明度の低下の間には明らかな正の相関がみられ、維持透析の期間が長ければ長いほど皮膚の色が黒いことがわかりました。しかし、透析患者の年齢とはまったく関係ありませんでした。 ところが冒頭に憶測しましたようにオンラインHDFの患者では逆に皮膚色が白くなりました。そこで種々の生化学マーカーとの相関をみたところ、血中BUN、尿酸、フェリチンとは相関しませんでしたが、血中クレアチニン、インタクトPTH、α1およびβ2ミクログロブリンと強い負の相関が認められました。
来年も...これらの尿毒症物質のうちクレアチニンだけが分子量113とかけ離れて小さいですね。低分子であるクレアチニンとも相関するのにBUN、尿酸とは有意の相関がなかった点については、透析患者の血中にはクレアチニンの代謝産物であるメチルグアニジンが増加しておりメチルグアニジンの約20%が血中で蛋白と結合した形態で存在し、通常の透析で除去されないことから、結果的にクレアチニンの増加が蛋白とポリペプチドの増加の可能性を考えています。そして、おそらく分子量が1~3万程度の範囲に色素沈着を進行させる原因物質が存在するのではなかろうかと推論しました。 維持透析患者の皮膚色が黒くなる原因についてはこれまで色々な報告がなされています が、皮膚に色素沈着をもたらす生理活性物質でメラノコルチンレセプターのアゴニストであるMSH(melanocyte stimulating hormone)がありますが、その分子量はおよそ16000と先ほどの範疇にあります。MSHにはα、β、γの3種類がわかっていますが、30年以上前に維持透析患者の血中のβMSH値が有意に高いという報告がなされていますが、もっとも作用が強いといわれるαMSHの動向が今後の検討課題かと思っています。 またさらに、透析患者の基礎疾患との関連につきましても小生の最近の研究として透析学会誌40(7):589-594,2007に掲載されましたので機会がございましたら御一読ください。 近年、透析医療は長足の進歩をとげ、種々の合併症への配慮もとられるようになり、平均余命が延長したのみならず、患者のQOLも著しく向上しています。長期維持透析患者に特有の皮膚の色素沈着が生じることは周知のことであったにもかかわらず、生命予後に左右する問題でもないため、これまで積極的に検討や治療の対象とはされてこなかったようです。しかし毎年透析患者が増え続けるなか、本当の意味でのQOLを考えると、特に女性患者ではこういった美容的観点からの透析治療も必要になってきたのではないかと考えています。
以上のような拙い研究でありましたが、今回このような高い評価を受けたことにとても光栄に存じます。また今後も私のモットーでもあります、「後世に残る仕事」をしてゆきたいと思います。 来年の第3回「JACET AJINOMOTO Award」には、やはり我々の愛知県から受賞者が選ばれることを望んでいます。まだまだ暑い日が続きますが、会員の皆様、どうかご自愛ください。
平成19年8月8日 光寿会 光寿会リハビリテーション病院 透析センター 柴田 昌典
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